白Tコレクション
センスの良いコーディネイトが分からない。
少し冒険してオシャレなアイテムを身につけた日は、そわそわして居心地の悪い思いをする。
誰にもオシャレと思われなくていいから、ダサいとは思われたくない。
もう無難でいい。無難が一番心が快適でいられる。
そう気がついてから、夏は白Tとズボンで過ごすようになった。
グレーは汗滲みが、黒はフケがついていないかが気になる。その不安をもカバーしてくれるのが白Tだ。
無難になればそれでいいので、近所のスーパーで買って着ていた。
街に出掛け、オシャレなSHOPの雰囲気に気後れしながら服を選ぶ、そんなことはもうしなくて良くなった。
ある日鏡の前で、ふと、もう少し胴回りのダボつきがない方がいいなと思った。
……駅前の商業ビルなら、売ってるかもしれない。
行ってみると、希望通りの少しスリムな白Tがあった。
早速、次の日に着た。
鏡に写った白T姿の自分を見て、今度は首まわりの形状と空き具合が気になった。
もう少し、詰まっていてほしい。
次第に、ありとあらゆるところが気になるようになった。
ついには、インナーの色が透けないものがいいなと、白は透けやすいという当然の理までも気になるようになった。
いつの間にか、休日に究極の白Tを求めて街に出掛け、オシャレなアパレルSHOPをハシゴするようになっていた。
そしてついに、究極の白Tに巡り合った。
もうずっとこの白Tを愛用しよう。
長い白T探しの旅は、ようやく終わりを迎えた。
洗濯後、その思いは打ちのめされた。
そう、洗濯のたびに脇縫いのラインが捻れ、洗濯機に雑巾絞りでもされてるのかなと不安にさせてくるタイプだったのだ。
あれは一体、どうして毎回同じ方向に捻れるのだろう。1回目の洗濯で右に捻れたなら、2回目の洗濯では左に捻れる。そういうことが無い。1度右に捻れたら、右に向かって捻れに捻れる。一体右に何があるというの。
でも、それ以外は究極に完璧なのだ。
次の週、もう1枚買った。
1枚だけをヘビロテするよりは、長持ちするはずだ。
今日は汗をかいていないから洗濯をせず、もう1日着られるだろうかと考えるようになった。洗濯をする時は、捻れないでと祈る思いで洗濯ネットに入れ、洗濯機の設定はソフトモードに、洗剤はオシャレ着洗い用に変えた。
週末になるとまた街に行き、もう1枚買った。
心許ない気がして、次の週は2枚買った。
このシーズンが終わったら、あの白Tは廃盤になって、もう買えないかもしれない。そんな思いで、その次の週はまとめて3枚買った。
家にはヘビロテ用、お出かけ用、ストック用の白Tが揃った。
全て同じ白Tだ。
それから何年も経った今、まだある。手付かずのストックも。
月日の経過とともに、白Tを着る機会は減ってしまった。
久しぶりに着てみた。
鏡に映った自分は、たるんだ腹回りのラインがはっきり分かり、妙に顔が浮いて見えた。
なんとなく可笑しくて、腹をポンと叩くと、贅肉がポヨンと揺れた。
肌触りは良く、着心地は最高だ。
それから毎日、白Tを着た。
もう洗濯のたびに気を揉むことはない。
捻れたければ捻れればいいのだ。
捻じれてヨレヨレになると、新しい白Tに着替えた。
白Tを着ながら、捻じれきった白Tにハサミを入れた。
長方形に切り、フローリングワイパーにセットした。

