捨てる理由を探している

断捨離

「全出し」は、やりたくない

タンスがギュウギュウだ。
ついに、整理することにする。

よし、と腕まくりをしたものの、SNSでよく見かける「全出し」は、やりたくない。
タンスから出すタイミングで「いる・いらない」を仕分けることと、一度全部出してから仕分けることに違いはあるのだろうか。
どうして、一度全部出すという工程を増やすのかが分からない。

ヒートテックが捨てられない

タンスの引き出しを開けると、ヒートテックが目に入った。
そういえば、以前から、伸びて背中の部分が薄くなっていることが気になっている。
でも、朝着る時には気になるけど、二日前にも着て洗濯したのだから、まあいいかと着てしまう。
二日前は着ても良くて、今日から着てはいけない理由が見当たらないのだ。
着てしまうと、何も気にならなくなる。
夜にはすっかり忘れているから、お風呂に入る時に流れ作業のように洗濯籠に入れる。
洗濯するときも思い出しはしない。
朝になり、ヒートテックが伸びていることを思い出しても、せっかく洗濯したから着なければ勿体ないという思いが勝つ。
だから、破れるとか物理的に着られなくなる理由ができるまで、だらだらと着続けている。

ヒートテックの寿命

ヒートテックは3年ほどで、買い替えを推奨されているらしい。
3年でヒートなテックの効果が切れると言われても、ヒートなテックの効果を盛大に実感しているわけでもなければ、効果が最大値でなければ凍えるわけでもないから、ピンとこない。
だから、ふーんと思うだけで何もしない。
Tシャツみたいにゴワゴワしないから、インナーに便利だなという感覚のみで、ヒートテックに真剣に向き合ったことがないのだ。

先日、ヒートテックに真摯に向き合っている人をYouTubeで見かけた。
ヒートテックには製造年が分かる記載があるそうで、手持ちのヒートテックの製造年を調べては、「ヒィ!このヒートテックはなんと10年前のものでした!す、捨てます!!」と言っていた。
ヒートテックは腐らないから別にいいんじゃないだろうかと思いながら、ハッとした。
この人は捨てる理由がほしいのだろうか。
もしかしたら、破れるという理由がないと捨てられない私と同じなのかもしれない。
なんとなく親近感がわいて、しっかり最後までYouTubeを視聴した。
だから、今の私はヒートテックに少しばかり詳しい。

伸びたヒートテックの製造年を確認した。
……10年前だ!
10年選手はうちにもいましたよと、心の中で例のYouTubeの人に呟いた。
なんとなく楽しくなり、ほかのヒートテックも「7年前だ、ふむ。」「こちらは5年前、ふむ。」と、次々に確認した。
そして、製造年に関係なく、ヨレて伸びているものを選んで捨てた。
製造年基準で捨てないのなら、製造年を確認するという工程を増やす意味はないのでは……。
自分でもそう思うけど、覚えたての知識を使いたかったのだ。
意味はなくとも、満足した。
こういう、ちょっとした満足感が人生を豊かにするのだ。

ストッキングの寿命

ヒートテックの製造年確認によって人生が豊かになった私は、次に、ストッキングに着手した。
未開封のストッキングがある。
もう履く予定がないから、売れないだろうかと思案した。
……もしかして、ストッキングにも、ヒートテックのような使用期限はあるのだろうか。
売るとなると、いくら中古とはいえ適当なものは売れない。
調べると、素材のポリウレタンが2~3年で劣化するので、新品未開封でも2~3年でダメになるそうだ。

そういえば、ヒートテックにも少しだけどポリウレタンが使われている。
内心、企業が買い替えのサイクルを促して、たくさん販売するために使用期限を設けたのではないかと疑っていた。
ポリウレタンの寿命だったのかと、妙に納得した。

未開封のストッキングを開けてみた。
購入から7年は経っていると思う。
……何ともない気がする。本当に2~3年で劣化するのだろうか。
疑いの気持ちが再びムクムクとわいてくるのを感じながら、葬式用に未開封を2個残し、他は全部ゴミ袋に入れた。

靴下の山

続けて靴下にとりかかる。
靴下は毎日は洗濯しないので、替えがいっぱいある。
意外とかさばるのに、靴下だからと侮って、少しのスペースしか配分していない。
だから、ギュウギュウに詰め込まれている。
何があるか分かりにくいなと思って、いったん全部出した。

床にできた靴下の山を見て、あ、と思った。
「どうして、一度全部出すという工程を増やすのかが分からない。」などと、口走っていたあの時の私よ、見ていますか。
ナチュラルに「全出し」をしている自分を目の当たりにしながら、断捨離は学びが多いなと思った。

毎シーズン服を買っているわけでもないのに、タンスは年々ギュウギュウになる。
破れるまで捨てられず、何年分もの服が地層のように積みあがっているからだ。
服をゴミ袋に入れようとすると、「破れていないのに、どうして捨てるの?」という声が頭をよぎる。
断捨離は、捨てる理由を探す作業なのかもしれない。

靴下に手を入れて生地が薄くなっている個所を探す。
見つけると、小さくガッツポーズしていた。

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