トマトが1玉98円で売られていた。
私は、トマトが実る時期に産まれた。
一目見てトマトが好きになり、はじめて食べた時からトマトが美味しくてたまらない。
恋人に誕生日に何が欲しいかと聞かれると、トマトが欲しいと答える。
バケツ一杯のトマトをお腹いっぱいになるまで食べてみたいのだ。
どこに行きたいかと聞かれると、トマト狩りに行きたいと答える。
青空の下で、採れたてのトマトをお腹いっぱいになるまで食べてみたい。
この希望を聞いた人は笑い、誕生日に甘くて美味しいケーキをくれて、おしゃれなファッションビルに連れて行ってくれた。
「誕生日に何がほしい?」
「どこに行きたい?」
聞いてくれる人は、もういない。
98円のトマトを手に取った。
赤みが足りず、ヘタの周りは茶色くなっている。
愛される旬を過ぎたから安売りされているのだ。
今年の誕生日は、バケツ一杯のトマトを買おうと思った。
帰宅してパソコンを開いた。
「トマト狩り 2026」を検索する。
ずらっと並んだ検索結果を見ながら、自分に聞く。
「どこに行きたい?」
愛しのトマト
日常
