「あ、雨……。」
外出中に雨が降るたびに、天気予報を見て家を出ればよかったと後悔する。
雨には濡れたくないけど、今この時のためだけに傘を買うのがもったいない。
どうしようと思いながら、雨宿りがてらにコンビニに入り、目の端で傘を見る。
680円。
……割と高い。でも残り本数に限りがある。買える今買っておいた方がいいのだろうか。
急ぎ足でコンビニの外に出て、近くの100円ショップを検索する。
徒歩5分。
まだ雨は降り出したところだ。今走れば売り切れる前に安い傘が買えるかもしれない。
よし、と走る。雨の中、傘を求めて。
息をきらして100円ショップに到着し、傘を探す。
330円。
これだ、と購入する。
「今使われますか?タグをお切りしましょうか?」
店員さんに気遣われて、笑顔で「お願いします」と言う。
店を出て、意気揚々と雨に降られた体に傘をさす。
家に着く頃には小雨になり、せっかく傘を買ったのだ、雨が降っているうちに帰ろうと急ぎ足になる。
これを繰り返したのだろう。
今、目の前にビニール傘が6本ある。
少なくとも6回は繰り返した証拠を前にしている。
雨は私を狂わす。
雨が降ったら、なんとか雨を避けて歩けないかと、できもしないことを考える。
天からの恵みは、空ではなく蛇口から出てほしいと傲慢になる。
雨の中を走るなら、100円ショップではなく自宅に向かって走るべきなのだ。
100円ショップの店員さんはすごい。
ずぶ濡れで傘を買い、青い唇を震わせながらタグを切るサービスに喜ぶ客に、顔色ひとつ変えない。
うっかり雨に降られて、うっかり買ったビニール傘は、その後、日常使いする。
このビニール傘なら、うっかり失くしても平気だからだ。
持っている布の傘はお気に入りだから、失くさないように気を遣う。
その点、ビニール傘は楽だ。
ビニール傘に慣れた頃、気分転換にお気に入りの傘をさして出掛けた。
帰りは晴れていたから、電車に傘を忘れてしまった。
失くしても平気なものの扱い方に慣れて、大事なものを大事に扱えなくなっていた。
無造作に置かれたビニール傘を6本、丁寧にまとめた。
今まで雑に扱ってごめんなさい。
ビニール傘に向かって呟き、心の中であなたを明日ゴミに出しますと告げた。
ビニール傘は、もう買わない。
ずっと使っていなかった折り畳み傘を、いつもの鞄に入れた。
ビニール傘
断捨離
