爆音の車で町内を駆け回り、ワイワイするオジサンたちの話

日常
レボリューションするオジサンたち

閑静な住宅街に、一軒の家が建った。

朝10時になると、ここはF1サーキットかなと思うような車の音がするようになった。
そのあと、18時頃まで、オジサンたちの会話や笑い声が響き渡る。
窓を閉めていても聞こえる。

何をしているのだろう。
見ると、庭に机を置き、オジサンが数人集まって談笑している。

楽しそうな場に水をさすのは気が引けるし、何より、爆音が鳴る車に乗り、おでこにサングラスを乗せているオジサンたちが怖い。
だから言えないけれど、うるさくてたまらない。

土日になると子供が騒ぐ声が響き渡ることがある。
うるさいけど、子供なら仕方ないと思える。
何なら、うるさい方が子供らしいとさえ思う。

でも、オジサンはどうだ。
うるさいけど、オジサンなら仕方ないとは思えない。
私の中のオジサン像は、知的でスマートな大人だ。
うるさいと怒られるようなことはしないし、車は軽かファミリーカーに乗っている。
マフラーをブンブン鳴らして住宅街を駆け回ったりはしない。
だから、オジサンなのにうるさいことが奇妙に感じる。
平たく言うと、オジサンならオジサンらしく、近所に配慮してほしい。

自分のイメージとかけ離れた「未知」の生命体が怖いのかもしれない。
今まで、オジサンたちの声が聞こえると、すぐに窓を閉めて聞かないようにしてきた。
オジサンたちを知ろうとしなかったのだ。

私は、窓を開け、耳を澄ませた。
音楽がかかっている。
そして、オジサンたちの声が聞こえる。
「食え。これ食え。」
「パー、パーン!」
「ホ、ホーウ!」
「マイレボリューション、マイレボ!」
そして爆笑が起こった。

オジサンよ、何を言っている。
「未知」が「理解不能」に進化し、恐怖心が増した。

そういえば、子供の頃、近所の犬が怖かった。
人が前を通るたびにワンワン吠えるのだ。
吠えられないように忍び足で通り過ぎようとしても、必ず勘づかれてワンワン吠えられる。
何もしないよ、前を通るだけだよと声をかけても、相変わらずワンワンは止まらない。
泣いているのか、怒っているのか、一体何を伝えたいのか。
コミュニケーションがとれない生命体への恐怖を感じた。

それに近い気持ちを、オジサンたちに抱いた。
自分の常識が通じず、理解不能の会話をするオジサンたち。
いっそ火星人ならよかったのに。
火星人なら、仕方ないと納得できる。

そう思って、ハッとした。
火星人は私の方かもしれない。
オジサンたちが、正しい地球人なのではないか。
仲間と談笑して楽しむオジサンたち、一人で耳を抑えてイライラする私。
どちらがこの世界に順応しているのか。
自分が地球にお邪魔している可能性を捨てきれない。

大人しく耳栓を付けた。
この耳栓はサイズがあっていないのか、付けていると耳が痒くなる。
地球人用の耳栓が合わないのだ。
耳栓が、私が火星人であることを証明している気がする。

どうりで生きにくいはずだ。

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