信号待ち

日常

交差点で信号待ちをしていると、同じく信号待ちをしている車の窓が開いていた。
暖かくなると、窓をあけてドライブするのは気持ちがいい。
もうそんな季節になったんだと春の到来を感じていると、空中にふわっと白い何かが舞った。
何だろう。
辺りを見回したけど、どこにいったかは、もう分からない。
周囲の人は、能面のような顔で信号待ちをしていて、白い何かについて話している人はいない。

……霊的な何かを見たのだろうか。

そういえば、霊が見える人が、ある日突然見えるようになったと言っていた。
今日がその日なのだろうか。
緊張しながら、白い何かが舞った辺りをもう一度見た。
窓が開いた車の運転手が、鼻をほじっているのが目に入った。

え。

人差し指の第一関節まで使い、クルックルッと手首を回し、軽快にほじっている。
車内というのは不思議な空間で、つい外から見えていることを忘れる。
かくゆう私も、運転をしながら顔の体操をしていた時期がある。
「イーウーイーウー」と言う動きを全力でしたり、目を全力で見開いたりする。口を尖らせて左右に動かす、左ひょっとこ右ひょっとこ体操もしていた。
そうですか、あなたも……と、運転手に親近感が湧きはじめたところで、信号が変わり、車はブーンと目の前を通り過ぎて行った。

……あの人の車のハンドルには、付いてはいけない何かが付いているのだろうか。
考えかけたところで、ハッとした。
あの白い何かは、鼻をほじった手を拭いたティッシュだったのかもしれない。

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