失くしたイヤリング

日常

ピアスの穴を開けたら、耳にしこりができた。
なんとなく、いつまでも傷が癒えないようで、開けたことを後悔した。

それでも、せっかく痛い思いをして開けたから、穴が塞がらないように毎日ピアスを付けた。
付けるたびに、しこりが気になった。
服装やネックレスと合うコーディネイトを考えるのが、だんだんしんどくなった。

ある日、ピアスを付けるのをやめた。
穴は閉じたけど、しこりだけは残った。

しこりも気にならなくなった頃、近所の雑貨店で可愛いイヤリングを見つけた。
1,300円ぐらいだったと思う。
とても気に入って、どこに行くにも付けた。
このイヤリングをきっかけに、イヤリングが好きになった。
イヤリングは少しずつ増えたけど、はじめに買った1,300円のイヤリングが一番好きだった。

そんな時、恋人と出会った。
一緒にいると居心地がよかった。

恋人と出掛ける時に、一番好きなイヤリングを付けた。
私がイヤリングが好きなことを知った恋人は、何かプレゼントしようと言い、これはどうだろうと自分で探したイヤリングの写真を見せてくれた。
全く好みではない上に、値段が数万円もした。
どう言えばいいか困っていると、「これは好きじゃない?正直に言っていいよ」と言われた。
「嬉しいけど、私が今付けているものは1,300円なんだ、あんまり高価だと付けるの緊張するよ」と言うと、「1,300円なんだ……」と、びっくりしていた。
「100円ショップにも可愛いイヤリングあるよ」と言うと、「100円のイヤリング付けるの?」と更にびっくりしていた。

一日遊んだ帰り、イヤリングを片方失くしたことに気が付いた。
恋人は、少し探して「ないね」と言った。
まだ探し続ける私に「また買えば?」と言った。
失くしたイヤリングが1,300円の安物だと知らなければ、真剣に探してくれたのだろうか。

イヤリングは、見つからなかった。
あのイヤリングは1,300円だけど、ハンドメイドの一点ものだったから、同じものは二度と手に入らない。
付けるたびに嬉しくて、私には1,300円以上の価値があったのだ。

このささいな出来事が、ささいすぎて言えなくて、心にしこりのように残った。
だんだん居心地が悪くなり、恋人も失くした。

失くした傷は、いつまでも癒えない。

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