ふと、神社に寄り道した。
よく来るいつもの神社だから、到着すると、いつもの神社だなと思った。
この神社には、手水の仕方や参拝の仕方を教えてくれる看板がある。
もう覚えているけど、毎回それを読む。
看板を読んでから正しい作法を行うのがルーティーンになっている。
神様にお話ししていると、「カァ」とカラスが鳴くのが聞こえた。
「カァ」と言ったな、と意識の遠くで思いながら、神様にお話しを続けた。
上空では、「……カァ……カァカァカァ」と、「カァ」の合唱が始まった。
この神社はカラスが多い。
鳥居をくぐってから参拝を終えるまで、「カァ」の大合唱が鳴り響いていたこともある。
あの時の「カァ」は、ヘビメタぐらいの激しさがあった。
上空を旋回する様子からは、ヘドバンをするドラマーにも負けない熱量を感じた。
神社参拝時にカラスが鳴く理由は、この時に調べてある。
カラスは神様の使いで、参拝者を歓迎してくれているそうだ。
……カラスが歓迎?神様の使いと名高い奈良の鹿でさえ歓迎のサインなんてないのに?
疑問が頭をよぎったが、こういうことを考えて素直に受け取らないのは私の悪い癖だ。
そもそも鹿はあまり鳴かないのかもしれない。鹿は無口な照れ屋さんなのだろう。
内心、激しすぎる「カァ」に少し狂気を感じていたので、熱烈な歓迎だと思うとほっとした。
よく考えると、毎回真面目に看板を確認し、正しい作法を行っているのだから、カラスに歓迎されることも、少し照れくさいが納得する。何も怖がることはないのだ。
それ以来、神社でカラスが鳴くと、必ずカラスさんありがとうと心の中で言っている。
今日の「カァ」の合唱も、熱烈な歓迎なのだ。
そう思うと、「カァ」になんとなくソウルを感じる。
『天使にラブソングを』でウーピー・ゴールドバーグさんが踊りながら指揮をするシーンがあるが、あの感じの「カァ」だ。
ゴスペル調の「カァ」を聞きながら神様にお話しを終え、上空を見上げた。
数羽のカラスが翼を広げ、真っ青な空を滑るように飛んでいた。
カラスさん歓迎ありがとうと笑顔でカラスを見つめ、神社を後にした。
そのあと、ホームセンターに行った。
カラスネットが売っていた。
なんとも言えない気持ちになった。
神社に行くと、カラスは熱烈に歓迎してくれる。
カラスはきっと人間が好きなのだ。
帰宅後、カラスの生態について調べた。
神社は背の高い木が多いから、カラスが多いらしい。
カラスが騒いだり激しく鳴くのは、威嚇をしているらしい。
……何度読んでも、「威嚇」と書いてある。
私は威嚇してくる相手に、毎回笑顔で「歓迎ありがとう」と言っていたのだ。
自分の煽りスキルの高さをはじめて知った。
「アホー」と鳴くカラスの声が聞こえた気がする。
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